未来少年コナン 第24話「ギガント」

なんでこんなに素晴らしいのか。ため息が出るほど心地いい話の流れである。
1978年作品、という感じが全然しない。
動きと台詞と表情が、ここまで絶妙な作品はなかなかないと思うが、どうだろう。
とくにこの回、ここに至るまでのモンスリーの心の変遷と負傷という状態の中で、ファルコを操ってギガントに突っ込むまでの流れは本当に心に染みるようだ。
ざっと見てみよう。
ギガントが太陽塔に放った攻撃を見て、すかさず「攻撃してみるわ!」と決断するモンスリー
正面からのすれ違い様の機銃攻撃、ギガントの尾翼を避けるために横転しつつ離脱する。無論、攻撃は全然きかない。
「もう1回やってみるわ」機体を水平に戻しつつ、粘りを見せる。
そこでコナンの「乗り移るからくっつけて!」との声に「やってみるわ! ちょっと荒っぽいわよ」と応える。
ここでよく見ると、操縦桿を押し込み上半身でそれをおさえつつ、ということは降下態勢をとり、右手でスロットルを押し込んで増速している(ように見える)。ちゃんと手順を踏んでいるのだ。
対空砲火を受けるとすかさず操縦桿を左に倒しこみ、次に引きつけて上昇する。
その後右のラダーペダルを蹴りこんで、思いっきり操縦桿を右に引き倒して失速、ギガント主翼の砲座に突き刺さる様子を描いている。
あっけに取られるほどの手際の良い描写っぷりである。また終始Gに逆らって機動する機体の操縦席で彼女が歯を食いしばっているのが印象的だ。
最後のトドメは、ダイスとのやり取りである。
それまでダイスのちょっかいに「バカね!」と何度か繰り返していた伏線がとても生きている。
ちょっと深刻な別れの状況。ギガントからファルコで離脱せねばならないモンスリー、残るダイスといった構図での会話。
モンスリー、そのパジャマ似合うぜ」
「バカね!」
(好きになった女の沈んだ顔は見ていたくないというダイスの気持ちが伝わる)
なんというか実に素晴らしい。ずっと彼女がパジャマで操縦しているのも、戦闘シーンなのに妙なアクセントを加えている。
そしてモンスリーは操縦席に戻っていく。
さらにシーンは続き、ギガントの主翼に突き刺さったファルコを大空に返すために“舵”を動かして“ジタバタする”様子まで堪能できる。モンスリーが操縦桿の押し引きしてフラップが上下し、ペダルを踏み込むことでラダー(方向舵)が動き、ようやく機体はギガントから引き離される…。


うーむ。宮崎駿はやはり「未来少年コナン」をもって代表作とすべきか、とか思ってしまう。
とりあえずここでは俺的な結論としておこう。


[追記]
関係ないが、ダイスの声・永井一郎氏はこの1年後、機動戦士ガンダムの冒頭の有名なナレーション「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって…」の台詞を口にする。
結構後まで同じ人間だと気がつかなかったことは、秘密の秘密だ。