細田守監督の人生相談・ロフトプラスワン

実はあまり語ることはないのです。
はじめて間近に小黒祐一郎氏と細田守氏を拝見できたのは大きかったが、いかんせん本当に人生相談するとは思わなかったし、ちょっと意識が朦朧としていたからだ。
いや確かに「週40本アニメを見ていて見合い話が止まっている上3次元に興味が持てないけどどうしましょう」から「徹夜しなければいけないときの眠気対策は?」「声優と結婚するにはどうしたらいいの?」まで、様々な興味深い質問にいちいち丁寧に考えて答えていく姿は好感が持てたし面白かった。
しかしながら、あまりにも長く間延びする展開に、人口密集地かつ煙草の煙が漂う中では、あっしの体力・気力が持たないですよ。あそこまで人が集まるとは…さすが「時をかける少女」の公開を控えた監督というか何と言うか。
参加者はだいぶ若い人(20代)が多く、雨の中200人を数える人間が終結したため、ロフトプラスワン側も急遽机を撤去して椅子席のみ対応ということに。私は開場1時間前に行ったのですが、既に整理券は96番でした。
とりあえず「声優と結婚するには」等の質問で、小黒氏と細田氏が実例を思い浮かべながらやり取りするのが連想ゲームっぽくて良かったなあ。2人のプロデューサーがいて、先輩プロデューサーに厳しいことを言われて泣いてしまった声優のフォローに後輩プロデューサーが回って…という話など、調べれば誰なのかわかってしまいそうだし。結論は声優と結婚したけりゃ声優になること、といったものでしたが(しかも客席からの示唆だった)。
個人的には煮詰まったときの解決方法が「スゲエ」と思いましたね。
なんでも煮詰まったとき、山下高明氏(東映アニメーション・最近拝見した作品だと「ガイキング」の28話の原画担当)と一緒に23:00〜05:00まで延々東映アニメーションの中庭にあるコートでバドミントンとして憂さ晴らししてから仕事に戻ったとか。6時間ですよ、6時間。バドミントンだけやってるのがつらくなってきたので、途中からシリトリしながらやっていたというから驚きです。その後きっちり仕事に戻れる神経がオレには分からんよ。
あとはペロカー(東映アニメーションの車。側面にペロが描かれているからペロカーと呼ばれているらしい)に乗って関越に乗り(東映アニメーション大泉学園近辺で関越の入り口が近い。)、サービスエリアに行ってホットドックを食べて戻ってくるというのが小旅行っぽいもので気分転換する様が見えるようで良かったです。
細田守監督については金沢美術工芸大学(油絵科)在籍時、四芸祭で金沢美術工芸大学側の委員長をつとめた話がなかなか青春してました。東京芸術大学側の委員長が葉加瀬太郎だというのも驚きでしたが、高校時代に鬱屈していた細田氏が大学で油絵という個人作業に埋没せずに、学園祭の実行委員という経験を通して人と人の関わりで何かやっていくことに意義を見出していく昔語りは、私が対極的な現状であるがゆえに心をうたれることしばし。最後に作品を評論するための方法論と作品をつくるための方法論は全然違って、監督なぞは実地にやってみないと分からないことが多すぎる…というような話もしてたなあ。「ワイルダーならどうする?―ビリー・ワイルダーキャメロン・クロウの対話」を適宜読み返しているとも。
とりあえず「デモジン」しか鑑賞していない(ナージャのときは意識してなかった)ので、後追いでゆるゆる作品を追って見ましょうか。でも「オマツリ男爵の島」は原作に思い入れのある人間の評判が良くないって話を聞くのだよなあ。
[追記]
そういやアメリカ国籍と思われる外人が女連れ(?)で来てた。日本語も達者だった。
バイヤー(仲買人)なのかもしれない。小黒氏と名刺交換してたなあ。
そこで「アメリカで公開するなら〜」といった質問してた。
日本の青春物語がどの程度外国で受け入れられるのか、民族や富裕度や宗教観の違いがあっても作品をとくにカスタマイズすることなく堂々と展開するのが理想なのでは…といったあたりの話が、ちょっと腰砕け気味に話されてみたり。
そうそう。細田監督は「時をかける少女」で自分の好みの少女を思う存分描いたということを示唆していました。「他人にはそう見えないだろうけど」と断って、「バカな女」が好きだとも。いやバカなのをアピールするのは「愚かな女」なので、誤解ないように言葉を重ねると、一所懸命やってるんだけど本質的にバカなんで、バカがそこかしこに溢れてこぼれてしまう…といった有様に惹かれるのだとか。
なかなかに通な拘りだけど、難しい注文ですよ。そりゃ。