クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者:ユナイテッドシネマ豊島園(8:45-10:29)

いつも最後に家族に話が集約されてしまう「クレしん」であるが今回は違う。
本郷監督の「しんのすけが主人公の映画を作りたい」という意向を反映して、素晴らしい出来に仕上がっている。
昨今の作品事情を鑑みるに、ことほどさように少年の物語を描いてくれるというのは実に貴重かつ、ありがたいことだと思われる。
全体の映像構成も、ドン・クラーイ世界のデザインは秀逸だし(ザ・カゲのデザインもよい!)、間に入るミュージカル調の場面は味わい深く、一方で日常描写は電車内で携帯電話や携帯音楽再生機に没頭する人々をちょっとだけシニカルに描いているし、また3D映像での震電(日本)とカーチスホークP40(アメリ義勇軍)の空中戦も楽しめる。
幻影が崩れていく場面で、映像がパズルのピースに分解していくあたりもセンスの良さを感じた。
上映後に客席の子供たちも楽しかったと声が上がっていた。朝一だったからかそんなに客は入っていなかったけど、その分おいらはゆっくり楽しむことができた。
あと物語後半に、敵の親玉ダーク(銀河万丈)があまりにカメラが寄ったため「寄りすぎだ」とメタに台詞を吐く場面が無性に面白かった。ガキ向けの台詞ではなかったがゆえであろう。
野原家の家族パワーも使えず、物語のお助けキャラであるマタ・タミお姉さん(ボクキャラなので胸はない)も話から脱落して、最後に無力なしんちゃんはそれでもそれだからこそ「野原しんのすけ!5歳」と自分自身が何者であるかを相手に宣言し続けるというのはある意味壮絶であった。
Gamerとしても物語好きとしても映像表現に注視している向きも、最後にキンキン(Golden Sword)とギンギン(Silver Shield)の助けを受けてファンタジーの王道を体現するシーンは必見であろう。ナルニア王国(第二章)を観に行っている場合ではないのである。
個人的にはマタ・タミの帽子をかぶったまま逃げたり戦ったりしているしんちゃんの心持ちに惹かれた。
さらには悪女の胸の大きさVS聖女の胸の小ささとの裏テーマまで読んでしまう、自分の才覚に震撼している次第。
「ふーいん、ふーいん、ぼいんぼいん」の呪文とともに封印されたマタ・タミの無念たるやいかばかり。