R.O.D TV版

R.O.D -THE TV- vol.9 [DVD]

R.O.D -THE TV- vol.9 [DVD]

全話視聴完了。
視聴者の心の中にR.O.Dの世界を構築させるだけの力を持った作品であった。
最後は大英図書館の理想に己のすべて(思い出までも!)を捧げる組織と、それによって自分でなくなることを拒否する能力者たちの戦いに収束させている。
いってみれば革新と保守なのだが、無理に変える必要があるのか? というのは常に現代的な命題ではあるよな。
皮肉にも子供の頃の景色とか町の雰囲気などを売り渡して、現在だとか直近の未来というのは成り立っている面がある。これをノスタルジィと言い切って捨てられるのは、本当に若いか、あるいは傲慢であるかのどちらかではないのか?
といった派生的なことは置いて。
やはり登場人物が一緒に過ごした日々を丁寧に描くこと、そして互いの心の動きをこっ恥ずかしいまでに描くこと、これが奇想天外・荒唐無稽・危機一髪の場面においての担保になっている。
TV版はアニタが帰る場所を物語の中で二重に用意していく過程であるとも言える。三姉妹がゆえに結束し、三姉妹ゆえに崩壊を内包している序盤。これが菫川ねねねとの生活、中学での生活を通して、さらに彼女が向かうべき場所を明確に示している。
そして物語後半、彷徨するアニタは中学での欺瞞的な生活を経て三姉妹再会に至り、自分の生活を再構築するのにすべきことを確信するのである。
ああ、おいらもミシェール姉さんの「三姉妹〜会議!」に加わりたい!(男性は無理です
しかし最後に英国に向かう前の三姉妹会議は素晴らしかったです。制作スタッフ(倉田英之?)は分かっていらっしゃる。
一方で好きな登場人物なんだけどナンシーさんの扱いはかなり微妙でしたな。いやOVA版からの流れを汲むのが難しいのは分かるけど。
精神的な弱点としては、読子(熱中バカ・面倒みられる方)にねねね(口達者・面倒みる方)を組ませたり、三姉妹をアニタ(実は脆い子供/直情径行)・マギィ(押しが弱い)・ミシェール(バランスよい)でひとくくりにしてまとめているのが安定しているのだけど、ナンシーさんはジュニアくんとの絡みではミシェール姉さんにもっていかれてる感があるし、読子に依存しているのは仕方ないとはいえ、ねねねとのコンビに太刀打ちできるものではない。物語最後「それから」でも自分探しの一人旅だったしなあ。
ちょっと不憫な感じ。
彼らが逃走劇の果てにバラバラになる場面、安定した絵から不安定にもっていき再会時の安定感への流れを演出している。単純に全員が同じフレーム内にいるのは多すぎるって話もあるが。*1
どちらにしても非常に楽しめるシリーズであった。途中、絵がちょいと乱れたりしたもののおおむね問題ないように思えたし。
あ、巨大紙飛行機での空中移動はバリエーション変えて何度か登場するのが面白かったが、権力者の失禁シーンはみっともない繰り返しなので自重してほしかったかも。
他には、ジョーカー氏の最後。絶対的な悪とか規定されていないだけに、ああした終わり方もやむなしだよな。
最後に本の山が崩れて物語の各所に登場した書籍が映し出されるのもまた感慨深し。自分の人生を彩る書籍が数冊時系列で並んでいるのと一緒なのかも。
とりとめもなく。そんなところ。


関係ないけどWikipediaR.O.D各話の説明で、速星七生の名前を久々に見る。おいらが高校時代に買った単行本、どこかにまだあるのだろうか…。

*1:読子の実家での逃亡共同生活場面はいい味出してましたが。