Harold Shea 抜粋

「そいつが私がすべきすべてのことだっていうんだ!」
彼は夕食前のマティーニをやりながら、ベルフィービーに苛立たしい調子で話しかけた。
「手紙を書いたり、電報を打つのがすべてとは、なんともはや」
「問題ないわ。(Naetheless???)」彼女は誇らしげに微笑んでいた。「あなたはうまくやったわ、ハロルド」
「うまくやった?」シェイは聞き返した。「君はどう考えたのかい?」
「なぜって、ガラデン研究所は残るのでしょう? 大学側は貴方の友人をリストラして新しい人員を補充することを主張もせずに」
ベルフィービーは答えた。
「それこそ貴方が恐れていたことではなくて?」
「いやその…君が言ったように」シェイは思案顔でゆっくりと言った。「本当にうまくやったのだろうか?」
「大丈夫よ。貴方は二人の破滅を防いだのよ」彼女は目を輝かせて彼の手を握った。
シェイは愛する相手に微笑みをもってその手を握り返した。「君に出会えて本当に幸運だったよ」
彼女は背が高く細身で、赤毛セミロングに整えている。彼女の故郷の森を連想させる素敵な緑のドレスを身につけていた。
シェイは彼女と出会えたという驚くべき幸運と、彼女と恋仲になれたという信じられないような出来事を思い返した。
「たぶん我々は将来について計画を立てるにはまだ早すぎる。でも、少なくとも今は安全だ。そう、しばらくは」
ベルフィービーは眉をひそめた。「遍歴の騎士さま(knight-errant 遍歴の騎士:Ghaele Eladrinの訳語)にしては、おかしな言い方だこと」
「この遍歴の騎士は突然、冒険よりも安全に目覚めたのさ」シェイはひねくれた物言いをした。
「この世界は以前訪れた他の世界に比べて、遙かに安全さ」
ベルフィービーは微笑み、彼の手にそっと触れて顔を輝かせた。
「なぜそんなに大きな方針変更を?」
「家で奥さんと一緒に過ごす魅力にちょっとね」シェイは嘯いた。
「それにいいかい、Archangle(? 理事長?)が“プロジェクト”が消滅するかもしれないとほのめかしたとき、ボクは背筋が凍る思いだった。
 彼はボクも含めて研究所の人員の総入れ替えを暗示したんだ。失職なんてパニックになりそうなこと、考えたこともなかったよ」
ベルフィービーは顔をしかめた。「それは良くない話ね」
「そうさ。仕事がいつもあふれていると思うかい? ここは快適だし、ガラデンはいい街だ…」
彼はふと思った。子育てはいまだ二人の間で話し合われなかった話題だった。
「そう、若いカップルにとっていい街だ。すぐさま転居しなけりゃならないなんて冗談じゃない」
「でもそうしなければならないなら、一緒に行くわ」彼女は彼の手を握ったままさらりと答えた。
「ありがとう、スイートハート」彼は目に太陽の輝きを宿して微笑んだ。でも嫌な顔して言った。
「しっかし、ドクやウォルターにどうやって連絡つけたらいいんだろうね?」


ノロケだ、ノロケ! にしても、文意をとるのが結構難しい。