スローターハウス5

スローターハウス5 [DVD]

スローターハウス5 [DVD]

佐藤哲也氏の「映画のこと」を参照して視聴したくなり購入。ようやく鑑賞した。


人生を物語のように順番にバッチ処理として流してみせるのではなく、モンタージュにしてランダムアクセスというか話の筋に関係ないとある規則によって並べ替えることで、視聴者に理路整然とお話を頭に格納させることなく全体を落とし込むような効果を持たせている。
それは奇妙なリアリティとともに映像を受け止めさせる手法であったりするのだろう。
たぶん「王立宇宙軍」の後半で人類の歩みを色々な技術革新などの場面をつなぎ合わせて見せる一連の映像に至る表現と同じ括りに属するのかもしれない。*1
でもよくよく考えるに、ドレスデン空襲を経て死体となった人々を山積みにしてガソリンをぶっかけて焼却する場面も、自暴自棄となってキャデラックを爆走させる奥さんの場面も、悲劇・喜劇ともに現実感を失って妙に平板な感じがする。これはトラルファマドア星というトンデモな場面さえも同じ切り口で見せているがゆえに、どんな振幅がある場面も奇妙に嘘くさく、それでいて当人はその場の自分の人生を生きるに自然で切実な視点に誘導されるからか。
とりあえずドレスデンの場面で「あれ? ここは旅行したことがあるのでは。たしかプラハだったような」と思っていたら、ライナーノートにロケはプラハだったと記してあった。カレル橋の近くだったと思うが、真相や如何に。
ともあれ、すんごい昔に読んだカート・ヴォネガット・ジュニアの「スローターハウス5」を復習したような気になれるのは、なかなかに素晴らしい。後に「ガープの世界」を製作するジョージ・ロイ・ヒルが監督ということもあって、この作品の最後も「人生はおとぎ話よ」という台詞が聞こえてきそうであったりなかったり。

*1:厳密には「王立宇宙軍」は過去から未来への流れを切り貼りして、壮大な時間を圧縮して伝えるための映像であるのだろうけど。