ポスト・デモクラシー

ポスト・デモクラシー―格差拡大の政策を生む政治構造

ポスト・デモクラシー―格差拡大の政策を生む政治構造

読了。
集団や組織の変遷の中で個人は様々に理不尽な物事を甘受しているように見受けられる。
それが構造としてどのようなものなのか把握しておくことは、最低限の抵抗と言えよう。
本書は簡単に言えば「新自由主義(neoliberalism)」という言葉にまつわる構造を、民主主義が資本主義の蔓延によって衰退期に入ったと捉えることで現状を説明している。
市場で最適な行動をとり続ける企業こそ正義だとするならば、その歪みがあまねく社会を覆い尽くしている。だが歴史をみれば、どの時代でも何かの選択は別の何かを押しのけて祝福と呪いをばらまくのである。そういった意味では我々は“魔法少女”となんら変わらんのかもしれん。
ただ本書の中で印象的だったのは「消費者が市民に勝利したのである」という一文。
オタクを正しい消費者の在り方として位置づけるなら、オタク文化の浸透はむしろ当然と言えるのかもしれない。「買い支える」という発言においらが微妙な気持ちを抱くのは、発言者が消費者という顔のない存在に思えて仕方ないからであろう。
本書は現在をポスト・デモクラシーと捉えることで、社会に所属する一員として如何にあるべきかにまで言及している。野蛮な市場からCitizenshipを守れというわけだ。
しかしながら懐疑的なおいらとしては、そこそこ息を抜きつつへらへらと生きていける世界であるように、まずは自分がへらへらふらふらと生きてみるだけである。


なんとなく付記。
たしかNHKの番組でFXで儲けたのかパーティー会場で我が世の春とばかりにインタビューに答える主婦だったかOLだったかの映像が非常に醜悪に感じられたことを思い出した。
大人げない話だが、ああゆうのはまったくもって頂けない。