雲のむこう、約束の場所
場所を渋谷に移して、新海誠氏の「雲のむこう、約束の場所」を見てきた。
最初、塔を見たとき「これは軌道エレベーターに違いない」と思ったのだが、全然違った。前情報がないとこういう勘違いも起こるということだ。
この作品を楽しむための見方は、たぶんジュブナイルとして見るのが一番いいのではないかと思う。
前作「ほしのこえ」でも「中学生のミカコが国連軍に選抜されるのはおかしい」とか「2人が別れ別れになる、もっと納得できる理由を提示されないと感情移入できない」などと指摘する人がいたが、そうではないだろう。
少年、少女の物語なのである。それはパンフレットにも記載されているように、郷愁とほのかな恋愛のお話なのだ。
ということは、それを分かった上で鑑賞するのが筋ということになる。
そして午前中見た「ハウル」と自然比較することになるが、完成度はともかく新海作品の方が緊張感が最後まで保たれていたように思う。
それはまあ欠点を愛するというか、いつ話が壊れてしまうか分からない緊張感も含まれていたことは確かだが、それでもある種の訴求力があることを否定するものではない。
無論、最初から最後まで素晴らしい作品であるとは言わない。
「BSアニメ夜話」でも指摘されていたことだが、歩いている人物の腰から上を正面から描くことは非常に難しい。この作品内でもそういったシーンがあるのだが、それはちょっと商業作品としてどうかと思わざるを得なかった。また、背景の美しさに人物の動きが追いついていないと感じる場面もいくつかあった。
とはいえ、やはりそれでもこれは佳作であるに違いない。
だいたい「不思議の海のナディア」でもジャンは自作の飛行機を飛ばしてナディアとともに脱出するし、岩本隆雄氏の「ミドリノツキ」でも主人公が自作飛行機を飛ばすのは重要な意味を持っている。少年が飛行機を飛ばそうと夢を見、それが少女との果たされることのない約束となるとき、突っ込みを入れようなど野暮ではないか。
集約するなら、少年は誰でも好きな女の子と一緒に自作飛行機で空を飛びたいのである。それが究極の結論だ。(間違いない)