最後の谷

30年戦争時、奇跡的に平和で豊かに暮らしている谷間の村に、アクの強い(そして宗教も忠誠心もバラバラの)傭兵を率いた冷徹で判断力と実行力に秀でた傭兵隊長、そして戦禍を逃れてようやく谷までたどり着き生き残るためにギリギリの提案・交渉を行う元教師、彼ら異邦人がやってきて…という話。
最近だと「トンマッコルへようこそ」(未見)と同じネタではある。
ただ30年戦争ネタだけあって、容赦ない歴史的事実が展開されていく。
そして楽園に住む谷間の村人と、外の人間に妥協点などないのであった。
以下、メモ。


●村の教会は破壊対象。既存の教会は旧教なので、新教にとってはまず壊してから…という話になる。
 (数年前の欧州旅行のときにも聞いた話で、旧教の古い建築物が残っていない地域もあるとか)
●今の自分の視点から見ると、教会の司祭(坊さんといった方がよいか)は本当にキチガイにしか見えない。とくに魔女を火炙りへと処する過程は最低。
●傭兵はまず第一に食料、第二に女、である。
 村での略奪・強姦はしない代わりに、慰安婦の供出を求める場面が興味深かった。
 最初は「8人」と傭兵隊長が要求し、「4人」と返す村長、結局「若い娘を6人」としてオチが付く。
 彼女たちの姦淫の「罪」を購うために、免罪符を買わせる段取りなんかも時代を反映している。
●「戦争の中で生まれ、故郷も友人も家族もない。戦争だけが唯一の財産だ」という言葉には、なんかくるものがあったなあ。
黒死病魔女裁判、宗教、政治、傭兵、戦争、本当にロクでもない時代だったのだな。
 現在が楽園というわけではないが、当時に生まれていたらまずこの年まで生きてなかっただろう。
コマンドマガジンvol71「復活!男泣き戦争映画塾」で紹介されていた一品であったが、なかなかに楽しめた。