American Pie

アメリカン・パイ [DVD]

アメリカン・パイ [DVD]

1999年作品なので結構新しい。4人のハイスクール(普通高)に通う男子高校生が、卒業前に童貞をいかにして卒業せしか、といった内容。
その有様が四人四様として描かれている上、進路・異性・学校といった学生にとっての重大な要素をさらりと見せている。
いや、正直見るのがつらい場面もあるのだが(表題となったAmerican Pieが登場するシーンとか)、生き恥さらせるのが青春だと割り切ればまあ次のシーンまでは我慢できます。
卒業前のプロム(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%A0)がクライマックスとして設定されていて、そこまでの3週間各員奮闘するのだが、失敗して結構酷い目にも会ったりする。
それでも級友はネタとして笑い飛ばすだけ、親友はネタにしつつも親友であり続け、本人は落ち込むもののそれほど陰湿にならないところが素晴しい。
また、4人のうちの主人公格ジムの親父がいい味を出しているのだ。息子の自慰行為に行き当たってしまった親父さんは、あろうことかエロ本を買ってきて息子に内容説明付きでさりげなく(?)差し入れるということまでやってのける。実にいい親父だ(というか爆笑ものだ)。
構図としては以下のような形。各自の奮闘過程が分かりやすく。
●煩悩は続くよどこまでも
主人公格で家庭も描かれるジム。
留学生のナディアに惹かれて、それなりにいいところまで行くのだが自らのSpeed Kingぶりが発覚(なぁんてこった!)。
しかもInternet経由で級友全員にこの事実が実況中継されるということに。
これがキッカケとなり自分なりにブレイクスルーするのだが、プロムでの結果は「俺、もてあそばれた?」というあたり。
それでもEndingではメゲないところを見せているが。
●恋愛っていいものですね
物語的には一番美しかったオズとヘザーのお話。
コーラス部にはいい娘がいる、というのでラクロス部と掛け持ちで(こんな時期に)入部するオズ。そこでヘザーと出会って互いに惹かれて離れて、最後にプロムで…という展開。
初々しい会話のやりとりが実にこう心に染みるものがある。君がそばにいることが自然で素晴しいことなんだって台詞を、相手に向かって真顔で言えるのは若い証拠だよな。
●愛はままならぬもの
4人組の中では唯一最初から女性と付き合っているケビン。
相手のヴィッキー(ヴィクトリア)とは互いに思いあっている仲ではあるが、進学先が違うこともあってプロムの夜に結ばれる場面では既に別離の予感を孕んでいる。
そこまでも随分と心はすれ違ったりしているわけで、当然ながら恋愛の別の側面を指摘しているという点で山椒のような役割を果たしている、かも。
またヴィッキーが自らの身体を相手に許すかどうか、親友であるジェシカと相談する場面などが挿入されているのもよろしい。
●番外?
クラスに1人はいるであろうユニークで素っ頓狂な少年、フィンチのお話。
ジェシカに200ドル渡してある噂を流してもらうことで、プロムへのお誘いが来るように仕向けるという策士(気取り)なところがまずイカす。
この策が大失敗して居たたまれぬはずなのに、プロムの夜は色々と衝撃的な事件があり、なんだか人生そんなに悪くないかも…といったあたりに落ち着くところが素晴しい。
つーか、スティフラーが気絶する場面は失笑してしまうぜよ。


アメリカ学園映画ということで何本か鑑賞してみたけど、かなりB級で駄菓子的な側面があることは否めない。
とくに深いテーマとか、秀逸な笑いが含まれているわけでもなく、ハリウッド的な娯楽でもないから、それはそうなのであろう。
だがしかし、そこに何らかの楽しみと自分なりの納得が得られるのなら、それは余人の問題ではなく自分自身の問題なのである。
他人に押し付けることなく、他人を規定することなく、世情に流されつつも冷静さを失わず、ただ自分の中にある嗜好・志向に従って進むがよろしいと思う(とか何とか)。
[追記]
・特典であるMaking&Interview映像を鑑賞。
出演者が等身大の高校生ってこんな感じだし高校生(Teenager)ってこういうものじゃない? としているのが面白かった。あと恋愛模様は女性次第という面があるというところも。
結局、男の子は繊細にならざるを得ないですからな。煩悩を抱えて右往左往という面がある以上、どのように昇華しようとてまさに相手次第だったり。いやはや。
・そういやケビンは兄貴から学園に代々伝わるHow to Sex本を図書室の隠し場所で入手するっていうくだりが、なかなかに古典的で妙に興奮しましたよ。
学園男子に代々受け継がれてきた秘密の書籍! うーん、男の子って素晴しい。