「僕らを育てた声〜あの人に訊きたい・声優編〜飯塚昭三〜」新宿ロフトプラスワン

出演者は唐沢俊一氏と飯塚昭三氏。内容に関してはあまり深くは書くとマズそうなので、箇条書きで軽く。
・若手の声優とは経験において段違い。ということは表現の幅が段違い。
・殴ったり殴られたりする場面で、拳の当たる位置によって表現は全然違ってくるはず。
・生理的な演技(走ってきたので呼吸を乱した状態で台詞を言うなど)の話。
吹き出しの台詞を喋るだけでなく、台詞に入るまでの呼吸だとか思い入れだとかがあって始めて言葉になる。生活音なども表現することあり。
・飯塚氏は今年75歳。東京生まれで小学校までは大阪だったが、疎開で茨城に移っている。
・茨城(水戸)でグラマンの機銃掃射を受けそうになったこともある。平山亨氏と同様に、そうしたときにパイロットと目が合うような体験もあったようだ。*1
・その後、福島県小名浜に移っている。
・TBS知恵の輪クラブで「四谷怪談」をやったとき、お岩が田の中勇伊右衛門飯塚昭三という配役のときがあったらしい。
・そもそもの初期から声優をやっているので、30分ぶっ通し録音だとか、生放送だとか、凄い緊張感とプレッシャーの中で鍛えられてきたわけだ。現在の録音・編集技術が高度になってそれに依存している人間には信じられない蓄積がある。
・そんな飯塚昭三氏も、アテレコではなくアフレコ(After Recording)で自分に声を当てなければならないときには非常に苦労されたとか。
・洋画の吹き替えを30分ぶっ通しで録音時、最後の最後で「Stand Up!」をそのまま発声してしまったエピソード(本人ではない)。もう一度最初から…という非常な脱力感(今では考えられない。
・最初は釣りマイクをアシスタントがうまく声優の前に移動させていた。これが3本のマイクに入れ替わり立ち替わり声優が入れ替わることでアテレコすることに。ところが人によってスタイルがあるため、立ち位置やら台本をどちらの手で持つかまで、フットワークや対人関係にも気を配らないといけない。
・自己BEST。
1)空飛ぶモンティ・パイソンテリー・ジョーンズ
2)特攻野郎Aチーム(ボスコ・アルバート(コング))
3)忍たま乱太郎(稗田八方斎)
・「空飛ぶモンティ・パイソン」“日本語吹替復活”DVD BOXについて。翻訳者や役者のコメントをとるべき。
・犬、猫、植物に話しかけることで表現に対する感受性を楽しみながら育てている。
[蛇足:DnD GamerもGhaele Eladrinに話しかけることで己の感受性を高めるべきですな。中二病とか言ってる輩はそこらへんがわかっとらんのですよ。ジオングの足並みに]
エクソシストの悪霊の声も当てる。東北新社からの依頼。試行錯誤して一応納得いく形にした。
・ETの声も同様に。こちらはちょっと「?」であった。
・もはや現実に存在しないモノにも声を当てなくてはならず、誰も教えてくれないので、独自に試行錯誤しつつ言葉を探り当てていった。
・発端は「好き!すき!!魔女先生(怪人クモンデスの声)」。血を吸いつつ台詞をはくので大変。次が「超人バロム・1(ドルゲの声)」。台本には「…」とか「ルルル」とか「ロロロ」とかしか書かれていない。さらに「イナズマン(帝王バンバの声)」に。
・過労+風邪+寝不足+煙草で、声が出なくなったことあり。仲間のカンパや親身になってくれる医師の協力で半年で快癒。その間の筆談の話など。
・客の選んだBEST。
1)人造人間キカイダーハカイダーの声):ハカイダー四人衆ってなんじゃあ。ハカイダーの持っていた悪の価値観が台無しじゃあ。
2)機動戦士ガンダムリュウ・ホセイ):路線からして戸惑うしかない配役。試運転的な運用で試行錯誤。
3)世紀末救世主伝説 北斗の拳(ハート):フドウを取り上げて欲しい。
唐沢俊一氏「(自分は)モンティ・パイソンファンの中では一番の小者」といった発言も(笑。それだけファンが濃ゆいってことだ。
広川太一郎氏がモンティ・パイソンのアテレコ時に「テストなしでやろう」と提案して、ぶっつけでやれてしまうエピソードが熱かった。凄いぜ。
ハカイダーが白骨ムササビ(和久井節緒)に敗れたのが悔しい。和久井節緒氏とは互いに怪人声などを当てるために生まれてきたような存在と認めた仲。
・個性的な声優が出てきて欲しい。モンティパイソン役を当てられる若い声優は?
といったあたり。

*1:爆撃は無差別だが、機銃掃射は明らかに殺意を向けているパイロットの姿を視認できたという。