ティーガー戦車隊 (上) 第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録

ティーガー戦車隊〈上〉―第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録

ティーガー戦車隊〈上〉―第502重戦車大隊オットー・カリウス回顧録

ようやく読了。
東部戦線でのティーガー戦車での戦いがいかなるものであったのかが、よく分かる。
女に会いに行くためにキューベルワーゲンを前線に差し向けるのを拒否する中隊長とか、決して前線に出てこない上官なのに宣伝や公報にはあたかも部隊を統率して活躍しているように報じられているだとか、攻勢作戦中に味方の砲兵に執拗に誤射されて撤退せざるを得ないとか、やるせない状況の中、侮ることの出来ない強敵たるイワン相手に、驚異的な忍耐力と冷静な判断力で優秀な戦車兵を体現したカリウスらにひたすら脱帽である。
それにしても戦場では本当に色んなことが起こるものだ!(巻末の記録文書からして、ティーガーの素晴らしさと扱いの難しさが読み取れる)
この本の「ティーガー戦車への讃(賛)歌」の章は、D&D Gamerも必読の文章であろう。戦車をキャラクタに置き換えれば、戦闘においての基本理念は似たようなものだからだ。
すなわち、キャラクタの強さは「その装甲と機動性、最終的には火力だった。この3つの要素をバランスよく兼ね備えれば最高のキャラクタができる」(中略:キャラクタのビルドがよければ)「あと必要なのは、経験と用心深さだけだ」となる。
“まず、撃て。しからずんば、必ずや真っ先に被弾する”というのは真理であろう。
先手をとるための必須条件は、戦車(キャラクタ)同士の緊密な連携だとしている。物的な条件が整った後は、真っ先に考慮すべきは豊かな経験であるとも。
なかなかに言っては何だが面白い。
そしてパウル・カレル「焦土作戦」でお馴染みのモーデル元帥(東部戦線崩壊といった流れの中で、負け犬となったドイツ部隊に今一度活を入れたドイツの上級指揮官と認識している)と出会ったくだりとか、グロス・ドイッチェラント装甲連隊指揮官として有名なシュトラハヴィッツ伯爵(常に伯爵であることを意識して、上官にも全然尻込みしなかったらしい)の記述が実に楽しかった。
「本作戦の勝利への責任は正に戦車長の行動に掛かっている。それは階級を問わない。お判りかな?」
「ヤヴォール、伯爵(ヘル・グラーフ)どの!」
中二的には、これを女伯爵に変換して、それこそ榊原良子さんにでもCVをあててもらえるとスバラシイということになるのだが。だがしかし。
ともあれ、下巻にも期待である。
後書きによればシュトラハヴィッツ伯爵の卓越した戦術、カリウス少尉の負傷、さらに転属して第512大隊(ヤークトティーガー!)での戦いの顛末が記されているとか。