シュトヘル 伊藤悠 小学館

ざっと一読。タイトルは悪霊という意味らしい。
モンゴルのチンギス・ハーンに滅ぼされた西夏周辺が舞台。
だけどお話は現代日本の男子学生がちょっと変わった転校生の女の子をカラオケ後お持ち帰りするところから始まる(というか全然普通の娘なんですけどね)。
実は男子学生はかの時代の「悪霊」と呼ばれた女兵士の転生らしく、女の子はなにやらハーンの隠し子的な文学と音楽を愛する少年の転生だったというラインはおいておき。世代を越えて巡り合う…という場面もその筆力があればそれなりに心に染みるものがあるが。
ともかく伊藤悠にしても荒川弘にしても、真面目な物語をこれでもかとマニアックに血と肉と逃れられぬ宿命として描きながら、巻末マンガであそこまでネタにできるのが信じられない。いやそれが女性作家の業というものなのだろうか。だいたい女兵士の修羅場での瞳の描き方が既に常軌を逸している気がするさ。と、これも作家の手の内ということなのだろうけど。
草原の騎馬民族の侵攻に対して、草原出身でありながら西夏文字を次代に繋いでいく役目を背負った少年(現代では少女)の大きな御話がある一方、過去軸と未来(現代)軸でそれぞれの時間がどう流れていくのか気になるですよ。過去で幸せになれない代わりに現代で…というのが定番だけど、そうであっても如何に見せてくれるか期待させるだけの力がある。のでは。