岡田斗司夫ひとり夜話(新宿ロフトプラスワン)

●Q&A編
・今年最低の映画は?…トランスフォーマー
・プロデューサーに必要なものは?…自分より才能のあるやつに振らない?
・読書量増やすには?…それより考える時間をとるべき
・漫画本どうしてる?…捨ててる
・スクラップの仕方は?…バクマンくらいしかスクラップしてない
・嫌なヤツだけどつきあっていかねばならない相手との付き合い方…回答不能
・TVの見方…結構オヤジっぽい。末期的。ヤラセとそうでないものとの境目を推測するのが好き


■全体構成 --- ロジカルエンターテイメントショー---
1) Q&A
2) ためになる話
3) 切なくなる話
4) 盛り上がる話


●Elite主義について
キングオブコントという松本人志(とそのブレーン)が番組制作に大きく関与している、芸人バトルで一番を選出する番組の話。
その審査員の設定が非常に面白かった。
準決勝まで残った芸人が審査員になり採点をするという構造は、「芸人だけが芸を分かっている」という芸人Elite主義を標榜しているに他ならない。普通はお茶の間や大御所を審査員に混ぜて、芸の評価という純粋さを失ってでも、視聴者を切り捨てるような番組のつくり方はしない。
アニメーターというか絵描きも同様で、絵がうまいと思った時点で何も言えなくなる習性がある。
それまでいっかいの動画屋だった貞本義行作画監督か何かに抜擢されたときも、とくに問題なかった背後には、絵がうまいやつだけが上に立てるという意識があったからだろう。大塚康生だったかは、貞本義行宮崎駿くらいしか自分よりうまい絵描きがいなかったので自由にやれた、などと言っていたらしい。
で、このキングオブコントを視聴して、岡田斗司夫は“危うい”と思ったようだ。
数字がとれてイケイケのときはいいが、数字が取れなくなり「芸人だけが芸を分かっているというけど、俺たちもうついていけないや」と現実が乖離したとき、いくら芸への評価軸が正しくあっても、いや正しいからこそその価値観を守ろうとしておかしなことになる。
太平洋戦争時の日本軍(軍閥)のようなものだ。
軍事の素人を排除し軍のワンマンで運営していたがゆえに、方向転換は容易ではなかった。
結局のところ、TVで放映される知識人・タレントの時間を食ってお笑い芸人が登場する時間が増えてきたこの5年くらいの頂点に「視聴者を排除してでも芸を評価する」という番組が出てきたのだとすると、後は下り坂になるのではないか。“お笑いシフト”の揺り戻しがこれからはじまるのかもしれない。


マンガノゲンバ事件について
おいらもたまに観ている漫画家の内面にそれなりに踏み込んだマンガノゲンバという番組で、唐沢なをきが取材を受けたのだが、「自分の言いたいことを話すのではなく、あらかじめシナリオがあるかのように語らなくてはならない状況に追い込まれたので、取材は途中まで進行していたにも関わらず、放映中止にしてくれと申し入れた」という事件が起きた。
これは考え方のテキストになる。
感情的にならずにこの事件でどういった考え方が成立するか提示してみる。
>野次馬的な考え方。どっちが正しいの?
1) 唐沢なをきが正しい。作家に好きに語らせないのはケシカラン。
2) NHKが正しい。予備取材を承諾しているし、途中まで進んだ仕事を投げ出すとは何事か。
>その他
3) ディレクターの視点。
唐沢なをきの話も分かるが、それではTV番組は成立しない。TV番組の抱えてる利点・欠点をいちいち説明するわけにもいかん。


岡田斗司夫の指摘。
1) TVの特性について
取材される側のプレッシャー。取材する側の傍若無人さ、多人数で押しかけて…というのはある。
あとTV番組の「場の空気でお願いします」というのは、実に正しい指示である。
TV番組メインで食ってる人たちの中に単発で登場するゲストが混じる場合、ゲストの側はメインの方々に気を遣って立てねばならない。言いたいことを言うのが仕事なのではなく、番組内で必要な役割を果たすのが仕事なので、ときに納得できないことでも己を無理矢理納得させて臨まねば成立しないのだ。
2) シナリオがあるなら事前にシナリオを見せろという主張について
これは貴方がジブリ鈴木敏夫ならば可能。そうでないなら無理。
予算枠を取ったり制作側の意思統一のために、企画書なりシナリオなりを作成して、たとえば「唐沢なをきの秘められた魅力××に焦点を当てる」という切り口で番組内の起承転結がどうなるか話し合われているのは、当然のこと。ただしこれに取材対象が関与してしまったら、どうなるか。
作家対作家の戦いになってしまう。(放送)作家の作品ではなく、作家・唐沢なをきの自作自演映像ということにならないか。
どちらにしても意思疎通が足りてないし、番組全体を考える立場からすれば時間はないのである。
3) TVの視聴者とは何か
何を売るにもTargetを設定するもの。
たとえば声優ネタで人を集めればそっち方面の人が集まるし、アニメネタでも同様だろう。
でもTVの視聴者はいろいろで、年齢性別集中度すべて違う。
主婦が洗い物の最中にラジオのように音声だけ聞いているかもしれず、チャンネルをかえてザッピングしている人もいるかもしれず、ビデオに録画しての視聴かもしれず、その集中度もぼんやり観ているものから真剣に細部まで見逃すまいとしている人もいるはず。つまり客層が読めない。
こうした中、視聴者批判は最大の禁忌となっている。
「おまえらが興味持たないから、こうした説明入れなきゃいかんのだ」とか「おまえらが望んでるからこんな番組つくらなきゃいけないのさ」や「おまえらが我儘いって…(以下略」など。
それゆえ客をある一定の層として取り扱えるように、番組序盤で状況説明したり役割を振ったり意思統一プレゼンみたいなことをする。
>Netの「貴方は18歳以上ですか」という入り口みたいなものか?


どちらにせよ結論は当事者(TV関係者や取材対象となる人々)が出せばよい。
その他大勢たる我々は、問題を認識して考え続けることが最善の対処であろう。


●切ない話(というか痛い話)
岡田斗司夫は昔から「かっこよくなる」が永遠のテーマであった。
中学くらいにギター買って、好きな娘の家の前の空き地で求愛行動を兼ねた練習を4〜5ヶ月してみたり。
「続・荒野の用心棒」のジャンゴに共感して、その歌詞をカタカナで生徒手帳に書き写して歌えるようになってみたり。
1972年当時の中学の生徒手帳が紹介される。いやあ中学生時代って(自分もそうだったが)本当に阿呆だよなあ。
あと肌が弱い体質で風呂に入るとしばらくじんま疹が出てしまうほどだったとか。だから週に一度くらいしか風呂に入らないという話をしたら、庵野秀明と意気投合したとか。庵野氏の場合、単に風呂嫌いだというのは置いておくとして。
>ジャンゴのテーマをカラオケで歌う岡田斗司夫
これも中学時代にレコードを聴きつつ歌詞をカタカナで転記して覚えた賜物であろう。
ともかく迷走した上に高校時代の彼女との話。
いつも「〜になりたい」と彼女に話していた岡田斗司夫は浪人、彼女は大学に入学したという。
好きな彼女に「岡田くんはなりたいばっかりだなあ。私はやることばっかりだよ」と自然な感じで言われたとき、自分の恥ずかしさを自覚する。自覚したからといってそうした傾向が治るわけではないが、“なる”というのは状態であって他人がいつの間にかそう認識するものと考え、以降「なりたい」と漏らすより、何か“する”ことを考えるように気をつける。
つまり「する」ことのステップを積み上げるのが大事。


●盛り上がる話
岡田斗司夫の(アイデア)ノート公開。
見開き一枚使って、右側に論理的なこと、左側に感覚的なことを書いておく。
TVに出たときの服装パターンを、所持している衣装から順列組み合わせで求めていたり。その中で最適と思われるものを選択しているのだそうだ。
>こうした考え方は、D&Dでお世話になっている、死せる詩人さんを連想させる。
センスのよいセンス大陸に住んでいる人間とは真逆の考え方で、あくまで論理的に処理していく。
自分の書籍の売上も、楽観予測・普通予測・悲観予測を立て、発売からのトラッキングをして普通予測に落ち着いたことを検証してみたり。売上げの減衰曲線(売上げ×トレンド)を描くことで、100万部行くためにはどのような減衰曲線を描かねばならないかを確認していたりする。


なぜ「ひとり夜話」を始めたのか?
岡田斗司夫「ひとり夜話」(ゲストなし・岡田斗司夫ピンでのトークライブ)というコンセプトで、どこまで集客できるのか。目標は2年かけて武道館から東京ドームへと羽ばたくあたり。そのための準備会のようなものであるとの衝撃発言。
大丈夫か、これ?(正直な感想
>たとえるなら、D&Dイベントを2年後に東京ドームで4万人集客して興業ぶちあげようと、死せる詩人さんに誘われたようなものか?(嘘
ジョー90*1のテーマとともに地下からせり上がってギターを抱えた岡田斗司夫舞台に登場! そういう絵面を思い描いている。
ロフトプラスワンに出演するのに助けてくれるスタッフは岡田側4, 5人。ロフト側も4, 5人。これがドームでやるなら200-300人は必要。
というわけでこの場にいる150人の客と今月大阪で同様なイベントを見に来てくれる100人をベースに、以下の計画を推進していく予定。


<第1段階>年内
・ロフト150人満員三ヶ月連続達成
・大阪で100人規模のハコを満員にする
・銀座あたりで個展を開く(内容は決まっていない)
<第2段階>来年初頭
・ロフトの前売即日完売
・BS, CS, ネットなどで収録レギュラー獲得
<第3段階>
・パルコ劇場、紀伊国屋ホール、サザンシアターあたりでイベント(400-500人規模)
・BS, CS, ネット, ラジオなどで生レギュラー獲得
勝間和代のディープマニアが200万いるとしたら、20万部書籍が売れる。つまりそれなりの母集団が形成できないと、集客は見込めない。
※パフュームのメジャー化を分析しての逆算でもある。
<第4段階>
恵比寿リキッドルームで1000人ライブ
岡田斗司夫祭り(内容未定)
<第5段階>
・地上波で番組を持つ
・武道館でライヴ→東京ドームへ(2011年12月31日)


無茶苦茶壮大なスケジュールだが、なにやら「レッスルエンジェルス」(PC9801版)の興業日程を聞かされている気がしないでもない。
確かに岡田斗司夫の壮大な計画とそのためのアイデア出しは面白いものはあるのだが。
みうらじゅんの公式
テーマ選択
・流行廃りがない
・TVに出ない
・昔から好きなモノ
・みんなが知っている
料理の仕方
・駄洒落
・愛(めでる)
・ツッコミを入れる
・独自の視点を導入する
これを岡田斗司夫に応用して、“と学会”に喧嘩を売るような“な学会”(なるほどね学会)*2を発足させたらどうか、など。
●メジャーの法則?
イッセー尾形はマニアで5分10分観ると面白い。柳原可奈子は5秒で面白さが分かる。その差は?


方向性はあってそうなので、後は何をするのか。
とりあえずOPとEDを用意してきたので、みんなで歌う。
OPはレッツゴーロジカル(アルプスの少女ハイジの替え歌。渡辺岳夫先生に謝れ!と突っ込まれそうだな)
EDは目指せ東京ドーム(中学時代に合唱した「若者たち」の替え歌)
個人的には「ウルトラクイズ」みたいな感じにできれば楽しそうで良いのだけど、単にワンマンショーをやるだけだと途中で挫折するのじゃなかろうか。


■次回(10/25)予告
・信じられない映画、みつけちゃった
・ロケット花火10万円分買ったことありますか
・究極のメイド喫茶を思いついた

*1:ジェリー・アンダーソンの特撮人形劇。「サンダーバード」「キャプテン・スカーレット」の次にこれが来るらしい。

*2:いかにも妖しいモノを屁理屈で納得させてしまう団体。